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新建築月評1月号

新建築社 No. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

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建築は技術によって支えられている。これは当たり前のことだけど、最近それを意識させられる建物が増えたように思う。サイトスペシフィックかつ単品生産を前提にした建築が工業製品に比べて技術的な遅れをとるのはやむを得ないが、そのギャップを小さくしてゆけば、実はかなりの創造の可能性が残されている。鉄とガラスとコンクリートという近代建築の生産技術がすでに1世紀以上前に開発されていることを考えると、そろそろもう少し現代的な技術が開発されてもいいのかもしれない。建築家がこぞって新しい技術を構造体に利用しようとしているのには、こうした時代の雰囲気が背景にありそうだ。

「中国木材名古屋営業所」では木材をとてもシンプルなかたちで構造材として利用している。特に屋根の構造はいままでこうした建物がなかったのが不思議なほど素直で効率的だし、NC技術を利用した家具も魅力的だ。今後いろんなかたちでのデザイン展開を予感させてくれる。

「ランバンブティック銀座店」のアクリル板を機械的に鉄板に象眼するという技術はかなり先進的だ。物質の熱膨張を利用する手法は一般的な建築施工レベルを越えてるが、無数に穴の空いた何か生き物のような外壁は工業技術を利用することではじめて実現している。

「トヨタL&F広島本社」は鉄骨を飛ばすことによって作り出された巨大な開口を格納庫のような手動の引き戸で処理し、まさに格納庫をオフィスとして使っているようなおもむきだ。「HQ#01ビル」はリブ付きの厚い鉄板で建物全てを作るというまるで船舶のような技術が使われている。それぞれの技術自体は特に目新しくないのかもしれないが、それを大胆に一般の建物に利用することで、これまでにない空間表現を手に入れている。

「梅林の家」も同様に鉄の建物だが、紙面からは鉄という物質の存在感をほとんど感じさせない。というかそれはテーマではない。非常にスケールの小さな空間をずるずる接続することで新しい空間表現を手に入れているが、極限まで薄い壁を作りあげる技術は、空間構成を抽象化し、境界としての壁の存在感自体を薄くするためだけに用いられている。妹島さんの図面表現はいつも抽象的だが、この住宅についてはまさに壁がシングルラインで表現されていて、パッと見た目は不動産広告にありがちなできの悪い間取りみたいだ。さらに一般的な意味で「おしゃれ」じゃない生活感のある写真を使うことで、この建物を成立させているコンセプトと感性の強度を試しているようにも見えた。16mmという厚さは家具の扉並である。薄壁で仕切られた小さな空間は、こどもの頃時々寝ていた押入の中みたいで、これは住宅というよりは大きな収納家具なんじゃないかとも思える。「ちらかっているものがきたなく見えるのではなく、むしろ楽しく見えるような生活や建て方があるのではないか」という言葉と、実際にそこに現れた抽象的かつ具体的空間には妙な生活のリアリティが見えてきた。

一方で「焼津の陶芸小屋」は非常に素朴なセルフビルドの技術を駆使している。コストをにらみながら最低限必要なものだけを、できるだけ単純化した技術と素材を用いて作るというデザイン手法はとても鮮やかだ。防水は船舶用の塗料を用いて問題があれば塗り直す考え方も潔い。また「安養寺木造阿弥陀如来像収蔵施設」の版築ブロックは地域に伝わる素朴な技術を利用している。その場所の土を使って建物を作るという話は非常にエコロジカルだ。これとて耐久性には難があるかもしれないが、ダメになった部分を時々積み直すという昔ながらのメンテナンスを前提とすればそれほど大きな問題はない。現代の建物だからといって何が何でもメンテナンスフリーを標榜することもないだろう。要は考え方の問題だから。

「なぜ、今、建築に抽象性が必要なのか」と題したインタビューの中で原さんは「建築は基本的に芸術や数学、自然科学と同じように理念を持っている。」と語り、モデルや論理の重要性を説いている。実際に建った建物だけに興味が向いてしまいがちな建築界の現状に対する批判も含めた発言で、いろんなデザインの試みをしていてもそれだけじゃつまらんということだろう。確かにその通りだと思うけど、モンテビデオでは可能だった理念の組み立てが今の日本では難しいという話を聞くとちょっと元気がなくなってしまう。むしろ、様々な技術に支えられた実験的デザインが数多く試される中で、21世紀の社会と向き合った建築や都市の理念が浮かび上がって来るというシナリオに期待したい。