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新建築月評1月号
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建築のありかたについて空間構成と架構という二つの視点で見てみたい。
金沢21世紀美術館は、個室と共用空間というプラン上の図と地の関係をクローズドとオープン、上からの光と横からの光、高い天井と低い天井という異なるコンディションで構成している。モダニズムのユニバーサルスペースという考え方は、美術館にホワイトキューブという白い均質な空間を提供したが、一口にホワイトキューブといってもさまざまな大きさや天井の高さ、光の状態といったコンディションの違いがある。この建物は様々なコンディションの部屋を準備することで、アートの要求する多様な空間に対応する。妹島さんと西沢立衛さんは個室に挟まれた隙間の空間を都市空間と形容し、美術館という非日常の施設ならではの抽象的都市空間を作り出している。
SANAAの建築表現はミニマリスト的である。しかし彼らはモダニスト的な美学を追究しているわけではない。彼らの発見した新しい空間構成に力を与えるために、ミニマルな表現に徹しているのだ。徹底したディティール操作によって空間構成は純粋さを際立たせ、まるで科学者が新たに発見した元素のように、それを他の建築へ応用する可能性の広がりを感じさせてくれる。
黒犬荘は天井が低くて閉鎖的な個室を配置することで、残りの空間を天井が高く開放的で連続したコモン空間として構成している。この基本的プログラムも金沢と同じように図と地の関係を作り出している。ひとつながりの細分化された空間という塚本さんの考え方も、金沢での都市空間に共通するもので、建物の大小や利用人数の寡多に関わらず現代的なコモン空間のあり方として一般化できるものだ。
一方、砥用町林業総合センターは構造体の架構の存在感が際立っている。モダニズムの美意識に従って木造トラスを直方体に組めば整然とした建物になったろうが、それをあえて不規則な籠状に変形させたことで、ある種不気味な力強さを持たせることに成功している。それが単なる装飾でもなく、かといって完全な合理性に裏打ちされているわけでもないという、きわどいバランスの上に成り立っているところにこの建物の魅力がある。
勝山館跡ガイダンス施設で耐久性を上げるために鋳鉄を使って建物を作ろうという発想は、さすがに最小限住宅の広瀬さんである。掘っ建て柱や工夫された特殊な梁形状などを見ると架構のプレファブ化という課題を追求をしてきたことがよくわかる。
とりりんは、50mmという非常に薄い構造架構による建物である。シェルの繰り返しによって全体の剛性を確保するやり方は折り紙で模型を作っているようだ。彼らは明るく気持ちの良い「環境の質」をデザインしたといっているが、こうした架構の建物は、まさに架構とそれに覆われた空間のあり方自体が問題であり、用途がどうこうという機能的問題は二の次になっている。建物用途の複合化やコンバージョンが当たり前となり、設備機器類も小型分散化してきた現在、架構という純粋な空間の質が建築のメインテーマに返り咲いたようだ。
さてしかし、建築家が新しい架構の型を開発したからといって、工法から材料、ディティールに至るまで、全てが創造性のかたまりのようなものだから、それがそのまま社会で一般化することもないだろう。たとえば西沢大良さんの架構は建築家の表現そのものであり、他人が応用するのは難しそうだ。それに比べると、空間構成の型はもうすこしアバウトな概念である。もちろんSANNAの建築自体を簡単に真似などできないが、この建物の空間構成のあり方を別の建物に移植することは比較的容易である。
適度なバリエーションを持つ個々のパーツがヒエラルキーなく集合し、パーツの隙間に都市空間のような隙間をもつ構成。これは、現代の独立した個人と社会の関係に似ている。美術館の長谷川さんは3Mから3Cへの移行というキーワードをあげて双方向、参加型、共同型の共創という価値観を示しているが、これは現代のリベラルな民主主義理念にもつながる。nLDK形式の戸建て住宅が理想的家族のイメージを視覚化してきたように、こうした空間構成をもつ建物が、リベラルな社会のイメージを象徴することになるのかも知れない。21世紀という時代が徐々にあたりまになってゆく中で、これからの建築の方向性が少しずつ示されているように思う。